7章 10/10『みつばちマーヤの冒険』クモに捕らえられたマーヤ [『みつばちマーヤの冒険』]
第7章 クモに捕らえられたマーヤ
☆7. MAYAS GEFANGENSCHAFT BEI DER SPINNE
作 WALDEMAR BONSELS 絵 Franziska Schenkel
クルトにとっては何でもないので、にんまり笑いました。だいたい彼は特別
力持ちの甲虫です。
「考えてもごらん」と、彼が静かに言った時、かれの頭の上で、恐ろしい
しゃがれ声がしました。
「泥棒!助けて!私から獲物をうばうの。私の獲物をどうしようと言うの、
太っちょのくいしんぼ。」
「そんなに興奮しないで、マダム」と、クルトは言いました。「私だって、私の
友達と話すことは許されるだろう。もしこれ以上私の気に入らないことを言ったら、
巣をめちゃめちゃするぞ。さてと、なんで急にそんなにおとなしくなったのかな?」
「私は悪運に見舞われた婦人のようね」と、クモは言いました。
「何も関係ないね」と、クルトは思いました。「今、あなたがなす事はどうする
かだね!」
クモは敵意に満ちた、毒々しい目をクルトに向けました。でも、それから巣の
上を見上げなすべき事を考えました。小声でののしり、激怒を秘めて、ゆっくりと
引き返し始めました。クルトを覆ってる硬い甲冑には、噛み付いても、突き刺しても、
意味がありません。
クモは早口に世間の不公平を猛烈に訴え、まずは自分の巣が見渡せる、しおれた
葉陰に隠れました。
その間に、クルトはマーヤを助け出しました。糸を破り、羽と足を自由にして
あげました。残りはマーヤが自分で解きました。喜びと幸福を感じていましたが、
残る恐怖と体の震えで、とても弱っていたので、ゆっくりと身づくろいしました。
「忘れなさい」と、クルトは言いました。「そうすれば震えも止まるよ。
飛べるかどうかやってこらん。」
マーヤはゆっくりと、静かにブーンと羽音を立てながら、飛んでみると、
とてもうまくいきました。体のどこも大丈夫でうれしくなりました。マーヤは
ジャスミンの茂みまでゆっくり飛び、香りの良い蜜のジュースをゴクゴクと
飲みました。そして満足するとキイチゴの茂みを離れ、草原に座っていた
クルトのところに戻りました。
「本当にありがとう」と、マーヤは言いました。再び得た自由で、幸福
いっぱいでした。
「私がしたことは感謝に値するのは確かだ」と,クルトは思いました。
「私はいつもこうだよ。さあ飛んでいきなさい。今日の夜は早く眠るのだよ。
家までは遠いの?」
「いいえ」と、マーヤは答えました。「すぐ近くのブナの林にいるの。
お元気で、クルト!あなたのことを決して忘れないわ。決して一生涯忘れません。」
おわり
7章 1/10
ブナ/Buchen
☆7. MAYAS GEFANGENSCHAFT BEI DER SPINNE
作 WALDEMAR BONSELS 絵 Franziska Schenkel
クルトにとっては何でもないので、にんまり笑いました。だいたい彼は特別
力持ちの甲虫です。
「考えてもごらん」と、彼が静かに言った時、かれの頭の上で、恐ろしい
しゃがれ声がしました。
「泥棒!助けて!私から獲物をうばうの。私の獲物をどうしようと言うの、
太っちょのくいしんぼ。」
「そんなに興奮しないで、マダム」と、クルトは言いました。「私だって、私の
友達と話すことは許されるだろう。もしこれ以上私の気に入らないことを言ったら、
巣をめちゃめちゃするぞ。さてと、なんで急にそんなにおとなしくなったのかな?」
「私は悪運に見舞われた婦人のようね」と、クモは言いました。
「何も関係ないね」と、クルトは思いました。「今、あなたがなす事はどうする
かだね!」
クモは敵意に満ちた、毒々しい目をクルトに向けました。でも、それから巣の
上を見上げなすべき事を考えました。小声でののしり、激怒を秘めて、ゆっくりと
引き返し始めました。クルトを覆ってる硬い甲冑には、噛み付いても、突き刺しても、
意味がありません。
クモは早口に世間の不公平を猛烈に訴え、まずは自分の巣が見渡せる、しおれた
葉陰に隠れました。
その間に、クルトはマーヤを助け出しました。糸を破り、羽と足を自由にして
あげました。残りはマーヤが自分で解きました。喜びと幸福を感じていましたが、
残る恐怖と体の震えで、とても弱っていたので、ゆっくりと身づくろいしました。
「忘れなさい」と、クルトは言いました。「そうすれば震えも止まるよ。
飛べるかどうかやってこらん。」
マーヤはゆっくりと、静かにブーンと羽音を立てながら、飛んでみると、
とてもうまくいきました。体のどこも大丈夫でうれしくなりました。マーヤは
ジャスミンの茂みまでゆっくり飛び、香りの良い蜜のジュースをゴクゴクと
飲みました。そして満足するとキイチゴの茂みを離れ、草原に座っていた
クルトのところに戻りました。
「本当にありがとう」と、マーヤは言いました。再び得た自由で、幸福
いっぱいでした。
「私がしたことは感謝に値するのは確かだ」と,クルトは思いました。
「私はいつもこうだよ。さあ飛んでいきなさい。今日の夜は早く眠るのだよ。
家までは遠いの?」
「いいえ」と、マーヤは答えました。「すぐ近くのブナの林にいるの。
お元気で、クルト!あなたのことを決して忘れないわ。決して一生涯忘れません。」
おわり
7章 1/10
ブナ/Buchen
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