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6章『みつばちマーヤの冒険』 プック [『みつばちマーヤの冒険』]

第6章 プック   ☆ Puck 
作 WALDEMAR BONSELS 絵 Franziska Schenkel
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*Puck / プック: イエバエ
〔独〕die Stubenfleige  〔英〕housefly
◇ Kastanienbaum/トチの木

すばらしい夏の日、暑さをさけてマーヤはトチの葉かげ
まで飛んできました。木の下には、テーブルとイスが
あります。木かげを利用した夏の食堂なのでしょう。

そこにやって来たのはイエバエのプックです。
プックは、マーヤが礼儀正しく挨拶しても返さず、
「お前さんはどっちにしてもバカだね」と、あまり
の失礼さに、マーヤはプックの首根っこを掴みます。
「離してくれたら何でもするから殺さないでくれよ」
と、頼みます。マーヤは人間について知っていること
を全部教えてくれることを条件にプックを離します。

「人間の住む家の部屋の隅で生まれたんだ」と、
プックは話し始めます。鏡の前で人間がする色々な
奇妙なしぐさのことも話します。鏡の右と左には
なぜだかシラーとゲーテの置物があること。鏡が
どんなものかわからないマーヤに「何もない水面
を立てたようで、硬いのさ」と、説明します。
「人間の言葉を習うには長年かかったけど、基本
的に同じようなことを話しているよ。ぼくの部屋に
年とった人が住んでいて、隅っこにある棚に
しまってある飲み物と来たら、その年寄りの鼻と
同じような色で、ボーとさせる甘い香りだ。
年寄りが寝息を立て始めたら、ぼくはコップに
残った液体を飲むのさ。それから顔の額の長い
しわで一休み。人間は手で追い払おうとするけど
空振りさ。」

マーヤは最後の質問をします。
「どうしたら、家で人と出会えるの?」
プックは教えます。
「家の中に飛んでいけばいいのさ。どれか窓が
開くまで待ってからだよ。でも出口も記憶して
おくこと。もしわからくなったら明るい方を
目指してね。」

プックと別れると、マーヤは密を吸うために
日が照るお花畑へ飛んでいきました。



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